書く、ということには、「かく」表出の歴史がひそんでいる。

地面をなぞり、岩板を欠き、木板を刻み、というような、〈筆蝕〉の歴史である。

文章を解剖するという場合、常識的には文章を章の単位で区分し、その下位に節を区分し、さらに句を区分して、語に至る、というところで理解は終わるのだろうが、著者は、さらに語の下位に文字を、文字の下位に字画を、さらに字画を起筆、送筆、終筆に区分し、それぞれの全過程がさらに下位の〈筆蝕〉によって支えられている、としている。いわば一般的には筆跡や書など、前言語帯域として、文学や文体から区別されていた領域も言語帯域に包括して考えるべきだという立場にたっている

SHISHOUSETU - 石川九楊『筆蝕の構造』
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